町医者の生態をゆるくつづったブログ

私の夢

 高校3年生で 大学受験生でもある次男から、「おとうさんの夢ってなに?」と聞かれました。
不肖 五十にもなろうかというわたくしに 息子に語れる夢ってなんやろか? 考えました。
 大学受験の小論文風に 800字でまとめてみましたので、おつきあい下さい。


 私の夢は、全ての患者さんから、胃がん・大腸がん死亡を無くすことです。開業以来13年目になりますが、毎年数名の方が胃がん・大腸がんでお亡くなりになります。発がんを予防することは出来ませんが、これらのがんは早期発見・早期治療が出来れば、完治が見込めるのです。
 開業医になる以前は、私は12年間消化器外科医をしていました。日常的に胃がんや大腸がんの手術をしていましたが、外科医もある一定のレベルに達すると、助かる命と亡くなる命は、手術する前からかなり分かるようになってきました。つまり、病期が進行しているかどうかでほぼ予後が決まるので、外科医の技術はある一定以上は余命に影響を与えないことが解ってしまいました。それならば地域に出て、もっと助かる命を増やすことが私の使命ではないかと考えたのです。
 この夢を実現させるためには、多くの患者さんにがん検診を受けて頂かなければなりません。血縁者に胃がん大腸がんがいらっしゃる方はもちろんのこと、生活習慣病や慢性疾患で通院されているすべての方にがん検診を勧める努力をしています。大腸がんについてはすでにこの4年余りで、のべ500名以上の方に便潜血反応2回法の検査を受けて頂き、15名の大腸がんを発見しました。そして全員が内視鏡切除あるいは腹腔鏡手術の低侵襲治療で、根治療法が施され、現在のところなんと一人のがん死亡も認めていません。この期間中有症状、つまり腹痛や下血などで発見された大腸がん7名の方は、残念ながらもう既に4名が亡くなられています。いかに大腸がん検診の効果が大きいか私が最も実感しています。
 胃がんについては、ヘリコバクター・ピロリ菌が強力な発がん因子であり、我が国の胃がん原因の99%を占めていることが、ごく最近判明しました。今後、ピロリ菌除菌療法を積極的に進め、胃がん死亡をなくすことが、私の夢です。